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特許業務法人
小野国際特許事務所メールニュース
2011年 1月号
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特許出願の記載要件(3)
前回、前々回に引き続き、記載要件について説明します。
最後の記載要件は、「実施可能要件」といわれるもので、明細書は他の研究者(当業者)が発明を実施できるように記載しなければならないとするものです(特許法36条4項1号)。
これは、発明開示の代償として特許権を与えるという特許制度の性質上要求されるもので、他人が追試可能でなければ発明の開示とはいえないためです。
具体的に発明が実施可能であると言えるためには、特許出願時に公知の技術に基づき、「物の発明」については、発明の対象である「物」が明確に説明されており、その「物」を作ることができ、使用できるように記載されていることが必要ですし、「方法の発明」については
、発明の対象である「方法」が明確に説明されており、その方法を使用できるように記載されていることが必要です。
よく、「発明のポイントを隠しながら特許が取れないか」ということを尋ねる人がいますが、最低限は、上記の実施可能要件を満たすだけの記載は必要で、出願明細書の記載とその当時の公知の技術から発明が実施できなければ、特許を出願しても特許権を得ることができない
ので、注意が必要です。
実際、その材料は社内にありながら、出願時に公知でなかったため、特許が得られなかったケースがあります。これは、「結晶ラクチュロース三水和物」という医薬結晶に係る事件で、明細書中にはこの結晶が種晶(これも結晶ラクチュロース三水和物)を用いて作ると記載さ
れていましたが、その元になる種晶は公知でなく、かつ、明細書中にその種晶の作り方が書いてなかったため、無効となってしまいました(平成17年(行ケ)10205号)。
会社内や、大学の研究室では簡単に手に入る物であっても、第三者の立場で見ると入手できない物も多いので、明細書中に記載する材料や手段などについては、一つ一つ第三者が手に入る物か、実施できる方法かどうかを確認していく必要があります。
また自然界から入手した微生物を利用する発明では、同じ微生物を入手することは困難なので、特許出願に先立ち微生物の寄託という特別の手続が必要なので、これにも注意が必要です。
特に注意していただきたいことは、記載が不備であると特許庁から言われた後に、その不備な部分を補正することは事実上困難であり、他の拒絶理由と異なって、発明の範囲を限定すれば権利が得られることがない点です。従って、明細書の作成に当たっては、くれぐれも出願
する発明が他の研究者が実施できるように書くことに注意を払って下さい。
このトピックに関してご質問等がございましたら、弊所小野までお問い合わせ下さい。
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2月の行事:2月 8日(火)13:00〜16:00 発明無料相談会 場所:浦添産業振興センター3階 小研修室
2月10日(金)13:00〜16:00 発明無料相談会
場所:発明協会沖縄県支部
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2月の滞在予定2月7日(火)〜 2月10日(金) 弁理士 小野 信夫
※弁理士が沖縄オフィスにいない場合でも、テレビ会議システムにて東京オフィス
の弁理士と相談することが可能です。
相談したい日にちと時間、会社名、担当者名、連絡先を記入の上、下記の
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